2024年02月24日作成
トレーラの法的な取り扱いと保安基準
1.はじめに
2.道路交通法や道路運送車両法上の取り扱い
3.運転時の注意点
4.トレーラを制作する際の保安基準
1.はじめに
普通の人はやろうと思わず、存在することすら知らないバイク”が”牽くトレーラについて、
法令の観点からどのようなルールがあるのかを紹介していきます。
なお、ここで説明するものは2023年4月時点のものであり、私の解釈によるものです。
実際に制作した際の記事はここにありますので、気になった方は見てみてください。
2.道路交通法や道路運送車両法上の取り扱い
まずは、そもそもバイクにトレーラを付けていいのかという問題ですが、
きちんと保安基準を守れば牽引することができます。
なお引っ張る側のバイクによって、車検・ナンバーの要否、法定速度が変わります。
○原付(125cc未満のバイク)で牽く場合
扱い:付随車
ナンバー:不要
車検:不要
法定速度:牽引時25km/h
その他:都道府県によっては条例で原付きの牽引を一部制限しているところもあるので注意
○軽二輪(125cc以上250cc未満のバイク)で牽く場合
扱い:検査対象外軽自動車(トレーラ)
ナンバー:必要
車検:不要
法定速度:牽引時も一般道60km/h、高速100km/h
その他:やる気があればわりと実現可能
○普通二輪(250cc以上のバイク)で牽く場合
扱い:軽自動車(トレーラ)
ナンバー:必要
車検:必要
法定速度:牽引時も一般道60km/h、高速100km/h
その他:車検が必要なので、強度計算書や連結検討書などの書類面でのハードルが高い
免許についてはそれぞれ引っ張る側のバイクを運転できる免許があれば問題ありません。
けん引免許は被けん引車の車両総重量(車体+最大積載重量)750kgを超える場合のみ必要ですが、
バイクでそんなに重いものを牽くことがかなり危険なので基本的に不要だと思っていて大丈夫です。
3.運転時の注意点
各種規制標識についてはバイク単体での運転時と変わることはないと思って大丈夫です。
以下に挙げる各種規制標識は被けん引車が750kgを超える場合のみ該当するためです。
ななお、補助標識で"750kg未満の被けん引車をけん引する車両を含む"などと記載があればそれに従う必要があります。
※出典 国土交通省 標識一覧
以下の場合であれば法的には時速100km/hまで出すことができます。
※画像元 武蔵境教習所
4.トレーラを制作する際の保安基準
実際にバイクが牽くトレーラを用意しようにも、ふつうはこんなの売っていません。
海外からの輸入であれば完成品が多少はあるようですが、国内に代理店があるわけでもないので入手できるかは不明です。
そうなると自作するしかないわけですが、日本国内での公道走行を想定する場合は保安基準に適合させなければいけません。
その保安基準について自分なりの解釈を項目ごとにまとめています。
保安基準については基本的に国土交通省の保安基準ページを参考にしてます。
また、本記事は2023年4月時点のものとなります。最新のものについては上記ページなどを確認するようにしてください。
ここから各項目の解説です。()内はバイクが牽くトレーラで場合の要否です
・用語の定義
トレーラは法的には”被けん引自動車”と表記されます。(保安基準第1条第二項)
原付きが牽くものは”付随車”となります。(保安基準第1条第十四項)
・燃料の規格(無関係)
トレーラに燃料は不要のため無関係
・破壊試験(無関係?)
同一の構造の装置が他に無いかものすごく少ない場合は免除みたい(保安基準第1条の3)
・長さ、幅及び高さ(必須)
250cc以上が牽く場合:長さ12m、幅2.5m、高さ3.8m以内(保安基準第2条)
250cc未満が牽く場合:長さ2.5m、幅1.3m、高さ2.0m以下(保安基準第59条、道路運送車両法施行規則・第二条別表第一)
・最低地上高(必須)
9cm以上(細目第85条、第163条)
・車両総重量(必須だけど抵触しない)
最大20t(保安基準第4条)
ただしけん引免許や後述するブレーキの関係から
750kg以下かつ牽く側のバイクの車両総重量/2以下にしておくことをおすすめします。
・軸重等(必須だけど抵触しない)
軸重10t以下、輪荷重5t以下(保安基準4条の2)
・安定性(必須だけど抵触しない)
牽引状態でバイクの安定性に支障があると引っかかるかも
・最小回転半径(必須だけど抵触しない)
牽引状態でで12m以下(保安基準第6条)
大抵の場合大丈夫だと思う
・接地部及び接地圧(必須だけど抵触しない)
200kg/1cm(保安基準第9条)
大抵の場合大丈夫だと思う
・原動機及び動力伝達装置(無関係)
原動機はないので無関係
・走行装置等(必須だけど抵触しない)
市販のタイヤ・ホイールを利用する分には問題ないと思われる
※保安基準の文章がわかりにくい
・操舵装置(必須)
牽く側のバイクの操作(ライト、ウインカー、ブレーキ等)と連動するのであれば問題なし。
別でスイッチ類を付ける場合は注意が必要
・かじ取装置(無関係)
対象外として明記(保安基準第11条第2項)
・施錠装置等(無関係)
対象外として明記(保安基準第11条の2)
・制動装置(条件付きで免除)
トレーラの車両総重量が750kg以下かつバイクの重量の半分以下であればいわゆるブレーキは不要
(保安基準第12条第2項、細目告示第15条の2、自動車技術総合機構審査事務規定7-19-1(3))
うちの場合
ZZR250(車両総重量164kg)/2>トレーラの車両総重量(本体15kg+積載50kg=65kg)
・連結車両の制動装置(条件付きで免除)
前述と同様
・緩衝装置(基本的に不要)
車両総重量2t以下のトレーラは免除(保安基準第14条)
・燃料装置(無関係)
燃料を搭載しないからね(貨物としての搭載は除く)
・発生炉ガス燃料装置(無関係)
燃料は使わないから
・高圧ガス燃料装置(無関係)
燃料は使わない
・電気装置(必須だけど抵触しない)
きちんと取り付けてあればOK
何らかのコンピュータを搭載する場合は注意が必要(保安基準第17条の2)
・車枠及び車体(必須)
最大積載量の車体後面への表示か必要(保安基準第18条第8項)
・巻込防止装置(無関係)
読んだ感じ該当するものはなさそう
・連結装置(必須)
走行中に外れるようなものでなければOK
・乗車装置(無関係)
人乗らない
以下同様
>・運転席(無関係)
>・座席(無関係)
>・補助座席定員(無関係)
>・座席ベルト等(無関係)
>・頭部後傾抑止装置(無関係)
>・年少者用補助乗車装置等(無関係)
>・通路(無関係)
>・立席(無関係)
>・乗降口(無関係)
>・非常口(無関係)
・物品積載装置(必須だけど抵触しない)
しっかりとした強度があればOK
・高圧ガス運送装置(無関係)
バイクトレーラで高圧ガス単体を輸送しないよね...?
・窓ガラス(無関係)
窓ガラスがないため
・騒音防止装置(無関係)
対象外として明記(保安基準第30条)
・ばい煙、悪臭のあるガス、有害なガス等の発散防止装置(無関係)
排気ガスが出ないため
・窒素酸化物排出自動車等の特例(無関係)
・前照灯等(無関係)
ヘッドライトのこと
対象外として明記(保安基準第32条)
・前部霧灯(任意での取り付けは可能?)
フォグランプのこと
・側方照射灯(無関係)
トラックに付いてる眩しいやつ
・低速走行時側方照射灯(無関係かつ取り付け禁止)
トラックに付いてる眩しいやつの低速時用
・車幅灯(必須)
いわゆるスモールライトのこと
ライトとしては5W以上30W以下で15cm^2以上の面積があり白色であること(細目第123条)
数は2個または4個で位置は地上から2.1m以下0.25m以上でかつ車体の端から150mm以内
車幅灯は尾灯、側方灯及び番号灯と同時に点灯消灯できる構造であること(細目第123条第3項)
・前部上側端灯(無関係)
トラックの上端に付いてるやつ
・昼間走行灯(無関係かつ取り付け禁止)
デイライトのこと
・前部反射器(必須)
車だとヘッドライトユニットに組み込まれているやつ
ものとしては三角以外の形状で白色かつおおむね10cm^2あればOK(細目第125条)
位置は地上から1.5m以下0.25m以上で車体の端から400mm以内であること(細目第125条第3項)
・側方灯及び側方反射器(必須)
側方灯か反射器の設置が必要
バイクなんかだとフロントウンカーと兼用していることもある
色は橙色で位置は地上から2.1m以下0.25m以上(細目第126条)
・番号灯(必須)
ナンバー灯のこと
白色であればOK(細目第127条)
市販品で対応可能
・尾灯(必須)
基本的に2個取り付ける必要があるが幅0.8m以下のトレーラであれば1個でOK(保安基準第37条)
赤色で5W以上30W以下で15cm^2以上、位置は地上から2.1m以下0.35m以上で、2個付ける場合はそれぞれ車体の端から400mm以内(細目第128条)
市販品で対応可能
・後部霧灯(無関係)
バックフォグのこと
・駐車灯(無関係)
古いバイクだとPにキーを回すと光ってるやつ
・後部上側端灯(無関係)
トラックに付いてるやつ
・後部反射器(必須)
トレーラは三角の反射板が必須
大きさは一変が150mm以上200mm以下の正三角形で色は赤色(細目第132条第1項)
接地場所は地上から1.5m以下0.25m以上で車体の端から400mm以内(細目第132条第3項)
・大型後部反射器(無関係かつ取り付け禁止)
大型トラックについている赤と黄色の反射材のこと
・再帰反射材(無関係)
トレーラの場合は前面のみ取り付け可能(保安基準第38条の3)
・制動灯(必須)
基本的に2個取り付ける必要があるが幅0.8m以下のトレーラであれば1個でOK(保安基準第39条)
赤色で15W以上60W以下で20cm^2以上かつ尾灯と兼用の場合は光度が5倍以上となること、位置は地上から2.1m以下0.35m以上で、2個付ける場合はそれぞれ車体の端から400mm以内(細目第134条)
市販品で対応可能
・補助制動灯(無関係)
ハイマウントストップランプのこと
対象外として明記(保安基準第39条の2)
・後退灯(無関係)
バックランプのこと
対象外として明記(保安基準第40条)
・方向指示器(条件付きで免除)
連結した状態で全長が6m未満の場合は不要(保安基準第41条第1項二)
ただ、個人的にはつけたほうがいいと思います
・補助方向指示器(無関係)
サイドのウインカーこのと
・非常点滅表示灯(無関係)
ハザードのこと
対象外として明記(保安基準第41条の3)
・緊急制動表示灯(無関係)
急ブレーキでブレーキ灯やウインカーが高速点滅するやつ
・後面衝突警告表示灯(無関係)
急ブレーキでウインカーが高速点滅するやつ
・その他の灯火等の制限(無関係)
紛らわしいのとかを付けたらダメってルール
・警音器(無関係)
クラクションのこと
対象外として明記(保安基準第43条)
以下は牽引側が搭載しているはずなので特に気にしなくて大丈夫
>・非常信号用具
>・警告反射板
>・停止表示器材
以下は設置する場合の要件のため自作車両(組み立て車両)では不要
>・盗難発生警報装置(無関係)
>・車線逸脱警報装置(無関係)
>・車両接近通報装置(無関係)
>・事故自動緊急通報装置(無関係)
>・側方衝突警報装置(無関係)
・後写鏡等(無関係)
いる?
・後退時車両直後確認装置(無関係)
バックカメラですね
保安基準としては不要ですが、あると便利
・窓ふき器等(無関係)
窓ってどこ...?
・速度計等(無関係)
牽引側についているため不要
・事故情報計測・記録装置(無関係)
緊急通報してくれるやつ
・消化器(無関係)
危険物などを搭載しないため不要
・内圧容器及びその付属装置(無関係)
LNG車やエアタンクがついている場合の要件
・自動運行装置(無関係)
原動機もないのに自動運行とは...?
・運行記録計(無関係)
タコグラフとかのやつ
・速度表示装置(無関係)
昔のトラックについてた緑3つのランプでおおよその速度を表示するやつ
以下は特殊自動車の要件のため割愛
>・緊急自動車
>・道路維持作業自動車
>・自主防犯活動用自動車
>・旅客自動車運送事業用自動車
>・ガス運送容器を備える自動車等
>・火薬類を運送する自動車
>・危険物を運送する自動車
>・乗車定員及び最大積載量
>・臨時乗車定員
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《画像引用元》
・国土交通省 - 道路標識一覧30https://www.mlit.go.jp/road/sign/sign/douro/ichiran.pdf
・武蔵境教習所 - 道路標識とは?基本知識から間違いやすい標識も確認
https://musasisakai-ds.co.jp/blog/32671/